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20周年記念誌 |
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院名 |
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アマチュア無線 |
稲沢クリニック |
橋本 敏博 |
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アマチュア無線
稲沢クリニック 橋本 敏博
開業してからというもの、殆んど遠出したことがない。留守のあいだに何か起きるのでは、と心配するより、家に居た方が良いからである。しかし、旅行はどちらかというと好きである。盆正月などは、混雑する駅や空港のニュースを、指をくわえて見ている。 そんなある日、無線というものがあることに気がついた。早速準備を始め、開業して約一年後、私はアマチュア無線を「開局」した。はじめてスイッチを入れると、ザーという雑音の中から、はっきりと人の声が聞こえる。 それからというもの、暇があると無線のマイクを握るという日々が始まった。少ない患者さんの数より、無線で交信した局の方が多い日もあった。文字通り、北海道から沖縄まで方っぱしから交信する。無線交信すると、あとで交信証というものを交換する。それぞれ、お国自慢の写真でできているものが多く面白い。私のカードは勿論「国府宮はだか祭り」である。 ある程度国内の局と交信すると、私は海外との交信に興味を持った。まずは、フィリッピン台湾などアジアの国の人たちと交信した。たどたどしい英語が通じるのは楽しいものだ。私は英語が話せませんと言っている。ロシアの局は私よりずっとうまい。 現在まで国内約千、海外約千五百局と交信した。無線交信の楽しさは、知らない土地に旅に出て、偶然誰かと出会うのに似ている。「今日は」から始まって、天気の話など差しさわりのない言葉を交わし、時に気が合うと人生について語り会う。ほんの数分の出合いだが、分れるときは、まるで親友同士のようだ。勿論、メディアとしてはパソコン通信の方が交換する情報も多く、確実性もある。しかし、アマチュア無線は、その時の太陽黒点活動、季節、時間によって刻々と交信可能範囲が規定されており、むしろその不安定性がかえって魅力なのである。また当然、アマチュア無線家の多くはパソコン好きでもあり、無線交信後電子メールを交換したり、逆にメールで交信の日時、周波数を打ち合わせて話をするといったことも行なわれている。 このように、アマチュア無線により、わずかな設備投資だけで、手軽に海外の人と話ができ、安全で、準備も要らず、天気も関係なく、混雑もなく、老いも若きも、ハッピーになれるのである。昔、趣味の王様と云われたわけである。 将来、定年制にでもよって隠退することができたら、アンテナと無線機を担いで、世界無線放浪の旅に出る、それが私の夢である。 |
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