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 20周年記念誌
タイトル 院名 氏名
大学は難しい 名古屋市立大学
第三内科 人工透析部
両角 國男 40


大学は難しい

名古屋市立大学 第三内科 人工透析部 両角 國男

 愛知県透析医会創立20周年記念誌の原稿の締め切りが迫り(過ぎさり)、困ったあげく最近感じている大学での生活について。
 50歳を直前にして、また、思いがけず始まった名古屋市立大学の生活も20年目となり、最近では身の回りに騒がしいことも多い日々のなか、大学人としての医師について悩むことが多い。
 医学部では、当然のこととして研究・教育・診療のいずれにも優れた能力を有しすべての面でバランス良く、人格高潔な指導者が要求されている。大学入試での一芸入学や面接・小論文での優れた個性ある資質を期待するのと異なり、希有に優れた人材を募集していることになるのだが、疑問視する声は聞こえてこない。記憶違いでなければ、業績を残した世の多くの研究者ってどこか変人奇人的因子が強かった様な気がするのだが?
 自身を顧みて、私はこの基準を文句なく満足していますとはとても思わないし、どうもこの要求には矛盾があるようだ。
 この要求を個人に向けて期待するのでなく全体機能としてなら理解できるが…・・、どうもそうではないようだ。医学部で期待される人間であることはとても難しいらしい。しかし、失格者が続出したとの話もないし…・・、どうなっているのだ!
 医学部以外に医師となる学生を養成するところはないから教育の重要性は極めて理解しやすい。入学直後には良い医者になりたいと輝く瞳の学生も多いと思う(信ずる)が、徐々に、時には急速に光りを失っていく。当大学では、腎臓内科は出席率は良く学生もまじめに取り組むとされている(考えさせ、記憶重視でない個性ある講義のため一応は努力している)。それでも、臨床講義室や実習にて、失われた輝きと無反応な数年の空白を見せつけられると、言葉はない。医師にとって無関心はとても悪い資質と思うのは年をとったためなのか?
 教育するため医学部教員になったわけではないと開き直ることもできない。日本の大学の有り様に問題があると叫んでも解決しないし…・・困ったことだ(嘆息)。
 そんなわけで、愛知県透析医会会長はじめとする諸兄に、出席率は悪い、活気はない、無反応に加え、交通費もろくに出ないような有り様で申し訳ないと心から侘びながら、今後も厚かましくも講義をお願いすることになります。よろしく無理をお聞きください。
 日本の医学部では研究しなくてもいいんじゃないの!との厳しい声が聞こえそう。
 なぜ医学部卒業者は殆ど全員が研究生活を少しだけ送るのか?この素朴な疑問への解答をまだ見出せない。研究したい人が、研究するテーマを見つけ、研究する能力を評価され、成果がでるまで研究を中心とした生活できてこそ、良い研究ができるのであり、片手間仕事では成果は得られないことは自明である。研究者の主力は30歳前後の若手医師が担うことになる。当然のことながら、医学部では、職業教育として専門性の高い臨床教育が行われている。この年代は同時に、専門医としての経歴を作り出す大切な時期にも相当している。片手間仕事では評価に耐える研究は残せない。この専門医養成と医学部での研究との区別が曖昧なことがこの問題の根幹である。研究者になるために大学に帰ったのでないヒトが優れた研究成果を残すこともあれば、その逆もあり、研究者の資質を見極めるのは難しい。その評価を誰が責任をもっておこなうのか?研究一筋に邁進する医師は少数派であろう。研究成果が少なくとも専門医や教育者として優れた能力を有する人を大学は多数必要としているはずだ。
 今、大学でも一般社会同様に自己評価・自己点検が行われ始めた。教育・診療についての評価もあるが、明らかに評価の中心は研究だ。いずれ、自己評価から第3者による客観評価に変わるだろうが、peerreviewとなるだろうか?目的意識のない大学での研究生活は、成り立ちがたい環境ができつつある。
 大学の任務の分業化が必要で、大学院大学が研究を請け負うことになる。しかし、今後も、臨床研究の本当に必要な対象は多く、臨床講座の研究は、基礎講座、他学部との共同研究がより重要になる。再度のお願いで恐縮ですが、今暫く医学部の研究に暖かい目で御支援ください。
 大学病院の診療に絶対的な優位性のないことはすでに周知であろう。今後、厳しい医療環境のなかで評価される診療をしないと、大学病院は特別の時代はとうに過ぎ去った。幸い、大学には優秀な医師となる可能性を秘めた多数の若者がいて、大学の真の財産は彼らである。大学人として私個人が、研究・診療・教育の3項目で同等に成果を残すことは難しい。良い医師を送り出すことを最優先に、研究に打ち込む一部の人を大切にすることが妥当なのだろう。
 論語の為政第二に:三十にして立つ(而立)、40にして惑わず(不感)、50にして天命を知る(知命)……とありますがとてもそんな心境にはなりえません。 しかし、口の悪い仲間から大学以外ので役に立つところ有りませんよと言われ、この環境から当分逃げ出すことができないようなら、名古屋市立大学第三内科で育った腎臓内科医は良いねとの評価を励みにもう暫く今の役割を演じます(そんなこと言わなかったとは言わせません)。最後までお願いで恐縮ですが、仲間にして得をする第3内科出身者を今後もよろしく!

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